
生命の木について
「生命(いのち)の木」について『実践カバラ』(大沼忠弘著 人文書院)には次のように書かれています。「『生命の木』とは、その果実を食べることによって、死すべき人間がその運命を超克して、『神』と合一し、永遠の『生命』をあずかることのできる木である。その目的は人間の内に宿る神性の『自己発見』であり、その神性顕現を実現することによって果たす『自己完成』に他ならない。」(同書50ページ)と書かれています。
『実践カバラ』にはアストラル・ライトという言葉が出てきます。これは「プラトンが『世界霊魂』と名づけた実体で、現象世界とは全く異なった光景を呈してはいるが、『魂の眼』をもってすれば視覚的に知覚できる世界なのである。」(同書259ページ)とされています。
アストラル・ライトには二種類あり、一つは見る人が「積極的に形成する視覚像」で、もう一つは「いわば向こう側から自ずと立ち現れ、こちらは消極的に受容する他ない視覚像である」(同書259ページ)とされています。大沼先生は前者を“形成像”、後者を“受容像”と呼んでいます。このアストラル・ライトを自在に扱えるようになることが“神秘修行”の中核をなすものだと考えられます。
同書にはアストラル・ライトについてさらに「アストラル・ライトは人間ばかりではなく、全宇宙に浸透し、充満している『魂』的実体である。それは可塑性をもった普遍的媒体で、あらゆる運動、律動、形相を受け容れ、それを高位の『霊』と、下位の『体』に伝播する機能を持っている。『魂』は両者の中間者、つまり手段なのである。『魂』の中に、言いかえればアストラル・ライトの中に書き込まれた形相は『霊』の世界に感応し、同時に『体』の世界に実現する可能性をもっている。この二方向の影響力を駆使し、『霊』-『魂』-『体』を統合して『神』との合一に至らんとすること、これが『魔法』と呼ばれる古代技術体系の正体なのである。」(同書263ページ)と書かれています。
さらに続けて「カバラではこの合一までの旅を『セフィロート』という十の宿場と、それらを結びつける22本の『径』を巡る巡礼という形で行う。その探求の旅路は『生命の木』と呼ばれる図像に象徴されている。この宿場と径にはそれぞれ固有の色彩が配当されており、従って『体』を表す一番下の宿場『マルクト』(王国)から、『神』を表す最上位の『ケテル』まで32相の色彩の階段あることになる。この階段を一歩一歩上っていくことがそのまま聖杯探求の旅になるのである。」となっています。
